- エスケシード
- エスケシードとペコちゃん
- 調理過程1
- 調理過程2
「エスケシード」
何もかも忘れてしまうスイーツ!?お菓子の歴史は修道院で使われていた卵から始まったと言われているポルトガルでは、黄色いスイーツがたくさんあります。ポルトガルを代表する美食の地として知られる、中部の山岳地帯ベイラバイシャ州の伝統菓子「エスケシード(esquecidos)」もその1つ。「エスケシード」は「忘れられた」という意味で、色々なことを忘れてしまうほど生地を長時間混ぜ続けるというレシピに由来しています。
この伝統的なスイーツは、昔からキリストの復活祭やお祭り、結婚式といった特別な日に食べられています。中部地方に滞在中、翌日に結婚式を迎える花嫁のお宅を訪ねる機会がありました。
穏やかな気候のなか庭でのランチを楽しんだ後、家族全員でエスケシード作りに取りかかりました。女性達は大きな鍋に入れた小麦粉、砂糖、卵をヘラで混ぜます。結婚式に参列する何十人ものゲスト全員分の材料なので、驚くほど大量! まさに何もかも忘れてしまうほど、一心不乱にかき混ぜ続けます。生地がちょうど良い硬さになったら、今度は平べったい円形に整え、それを男性達が窯に入れて焼き上げます。女性達が生地を混ぜている間も、男性達は窯の温度が上がり過ぎたり下がり過ぎたりしないよう、薪をくべて調整していました。
焼き上がったものを入れ物に移し、新たに作った生地を並べて窯に入れて……と、一連の作業は何度も繰り返されました。この日は気温も高く、窯の周りで全員汗だくになりながらの作業でしたが、家族の息はピッタリと合っていました。きっと結婚式当日は、家族みんなで作ったこのお菓子が花を添えたことでしょう。
ほのかに薪の香りがする焼きたてのエスケシードはふっくらとしていて甘さが引き立っていました。ボーロにも似たとても素朴な風味で、どこか懐かしささえ感じました。