- サマヌー
- サマヌーをかき混ぜるための巨大な鍋
「サマヌー」
春のお正月「ノールーズ」を祝うイラン国民にとって1番大事な年中行事、「ノールーズ(お正月)」。2,500年以上前からイスラム教とは別に行われている儀式で、ユネスコの無形文化遺産にも登録されています。イランが元旦を迎えるのは、太陽が春分点を通過する3月20日から21日です。太陽が春分点を通過する時間、分、秒まで正確に発表され、その瞬間に新年をお祝いします。
ノールーズの日には、ニンニク、酢、リンゴといったペルシャ語の「س(スィーン)」から始まる7つの食べ物を縁起物として飾るという、日本の七草粥のような習慣を行います。この7つの食べ物の1つが、今回ご紹介する「サマヌー」。溶かしたチョコレートのようにも見えるスイーツで、富のシンボルともされています。原材料の麦芽は昔からビタミン不足解消のために食べられてきた栄養たっぷりの食材で、ビタミンB群が豊富に含まれています。
サマヌーの調理は、大変な手間がかかります。まず、よく洗った麦芽を2日間水に浸して発芽を促した後、ビニール袋に入れてさらに2日間ほど置き、しっかりと発芽させます。育った芽を手でちぎり分けて機械ですりつぶし、エキスのみを抽出したら、大人が何人も入りそうなほど巨大な鍋に入れ、小麦粉と一緒に10時間以上も手作業で混ぜ続けます。それを小分けにして、アーモンドやピスタチオで飾り付けて……、ようやくできあがりです。
お正月の前後の「バザール(市場)」では、サマヌーが大きな鍋で売られていました。砂糖や人工甘味料を一切使わない、麦芽のほんのりとした優しい甘さと、粘り気が強いしっとりとした食感は、まさに日本人好み! 私もすっかり病みつきになりました。