- バクラヴァを焼き上げるのは、村の大きな窯
- 焼き立てのバクラヴァ
- 水、砂糖、レモンを混ぜたシロップ
- 祭りの前日にシロップをかけ、一晩寝かせます
- たっぷりとシロップが染み込んだバクラヴァ
- 上はパリッと食感、下はしっとりとした舌触り
「バクラヴァ」
クルバンを祝うオスマン帝国の宮廷スイーツヨーロッパとアジアにまたがる国、トルコ。両大陸を隔てるボスポラス海峡は、黒海、地中海、大西洋を結ぶ海の重要拠点とされています。
そんなトルコを代表するスイーツの1つが、イラン・イスラム共和国の回でもご紹介した「バクラヴァ」。紙のように薄いパイ生地を何十層にも重ねた上品なお菓子で、甘いシロップをかけて食べます。
かつてこの場所には、600年以上に渡って広範囲を支配したオスマン帝国がありました。バクラヴァはその宮廷のキッチンで生まれたスイーツで、当時は褒美として兵士10人につき1皿ずつ振る舞われていたと言われています。
昔は宮廷で食べるような高価なものでしたが、今では町のお菓子屋さんで気軽に手に入れることができる身近な存在です。
トルコでは、このバクラヴァを国民がこぞって食べる日があります。イスラム教の祝日「クルバン(犠牲祭)」です。
クルバンとは、牛や羊を生贄としてアッラーへ捧げ、切り分けた肉を貧しい人々に分配し、助け合いの精神を養うお祭りです。クルバンが開催される4日間は家族や親戚の家を訪問し合うのですが、そのときチャイやコーヒーと一緒に振る舞われるのがバクラヴァ。ピスタチオが入っていたり、ナッツが入っていたり......と、それぞれの家庭のさまざまな味を食べ比べるのがクルバンの楽しみの1つとなっています。
トルコ中央部にあるカッパドキアに滞在中、偶然、クルバンのためのバクラヴァ作りを見せていただくことになりました。
バクラヴァ作りは、祭りの数日前から始まります。
まずはパイ生地をこねて薄く伸ばして重ねていくという、非常に手間のかかる作業です。生地を成形したら、今度はそれを丸いトレーにびっしりと並べていきます。
バクラヴァを焼き上げるのは、村人が共同で使っている大きな窯。この時期の気温は30℃以上に達することもあるので、正に体力勝負の大仕事です。
焼き上がったバクラヴァは丸1日寝かせ、クルバン祭の前日に砂糖と水とレモンを煮立てて作るシロップをかけます。さらに1日置き、味が染み込んだらできあがりです。
できあがったバクラヴァを食べてみると、上側は幾重にも重なったパイが奏でるサクッとした食感で、下側はたっぷりと染み込んだ甘いシロップでしっとりとしていました。この2つの食感を同時に味わえるところが、バクラヴァのおいしさの秘密なのでしょう。
ちなみに夏の暑い時期になると、「ソウク・バクラヴァ」という冷たいバクラヴァも出回るそうです。